40代・50代の医学部再受験体験談を、成績・参考書と併せて紹介!

今日、40代・50代以上の医学部合格、あるいは医師国家試験合格の話題がチラホラ聞こえてきます。

また、例の医学部入試差別問題が噴出して以来、大学側の姿勢に(ほんの僅かですが)変化の兆しもあるようです。

世俗での評価はともかく、特に40代・50代以上の人で医学部を目指している方にとっては追い風と言えるでしょう。

実は筆者もその一人。
一般入試を中心にいろいろと試行錯誤、紆余曲折を重ねてきました。

そこでこの記事では道半ばながら、筆者の体験談を踏まえつつ40代・50代以上の医学部再受験の実態を少しでもお伝えできたらと思います。

なお当記事では、中高年が医師を目指すことの是非・当否について一切言及しておりません。
この点については、各人の人生観及び各大学側の判断に委ねたいと考えます。

この記事の執筆者

若い頃、国立大医学部を目指して多浪しつつも挫折して、早慶へ。
長い間、士業に従事する一方、夢を捨てきれず、再受験を決意。
現在、道半ばのまま、学士編入なども研究中。

目次

40代・50代の医学部再受験体験談:経過と感想

再受験の経過

筆者は、40代の終盤から50代にかけて通算5年ほど医学部の再受験を経験しました。

現在も研究中で完全に諦めたわけではありません。

少し具体的に言えば、最初の2年は基礎固めで(国立私立を問わず)理系科目及び英語に絞って勉強しました。

後半の3年は、主に国立大学を目指して取り組んできました。

そのなかでも、筆者は比較的2次には自信があったのですが、センター試験が特に苦手なため、特にこのセンターに力を入れたのを覚えています。

結果は次の通り。
センター試験が終了したのを機に、一旦、区切りをつけて今日に至っております。

1年目慈恵医大・日本医大ともに不合格
2年目日本医大1次合格(2次<面接>棄権)
3年目センター1年目:約65%(平均点プラスαくらい)
4年目センター2年目:約75%
5年目センター3年目:8割弱
注:事情により2年目と3年目は1年間のブランクあり

とりあえず2年目に、いわゆる”お試し受験”した私大医学部1次(日本医大)に合格。

それなりに成果が出てきたと考え、本命の国立大医学部を目指して勉強を再開します。

ただし、センター3年目(最終年度)は撃沈。
2次に進めないまま、筆者の一般入試は終了しました。

再受験の感想

全体としてはやはり暗記と計算がきつかったと思います。

また(昔と試験傾向が異なり)スピード重視。
分量も半端はありません。

もちろん、40代以降となれば年齢的な厳しさもできてきますし、正直、地頭の違いも痛感させられました。

ただし、この後、紹介しますが、学力自体は(私大、国立2次を中心に)結構、学力の進展が見られました。

センター試験も予備校の模擬試験では8割半ばほど取れたものです。

もっとも予備校の模試と本試験は本質的にかなり違うというのが感想です。

赤本や黒本で過去問も徹底的に研究したのですが、結果は以上の通り。

(センター終了後)共通テストも分析してみたのですが、やはり中高年の再受験には内容的に厳しいと判断。
現在は学士編入について研究をしております。

40代・50代の医学部再受験:成績(参考)

センター試験の最終年度に受けた、最後の模試(駿台予備学校の全国模試)の成績が残っていたので参考までに公開します。

見づらいので簡単に要点だけまとめておきます。

科目得点/配点偏差値平均点順位
英語106 / 20065.165.61105 / 14759
数学135 / 20063.386.61431 / 14787
物理50 / 10058.434.82257 / 11895
化学35 / 10048.137.77727 / 13920
科目得点/配点偏差値平均点順位
英数理2科目326 / 60062.1231.71569 / 13581
英数理1科目341 / 60062.7237.71513 / 14527
英数のみ241 / 40065.8152.5926 / 14677

科目ごとの感想:
とにかく英語が激ムズ(東大志望者でもなかなか半分取れない、といった感じでした)。
対して今回の数学は(駿台にしては)やや易。河合塾の全統医進の方が難易度は高いかもしれません。
理科は駿台としては普通でしょうか。物理はまぁまぁでしたが、化学はご覧のとおり…です。

こちらも同様に合格可能性(判定)の結論を示しておきます。

志望校判定総志望順位
三重大医学部B27 / 161
金沢大医学部C19 / 115
新潟大医学部B23 / 190

全体的には(最高に良いわけではないものの)学力は相応に身についてきたのではないかと感じています。
もし仮にこれが本番なら(少なくとも2次の学科試験は)ひょっとして…などと思っています。

次は日本医大の1次(学科試験)に合格した時の資料です。こちらも参考まで。

日本医大は試験傾向が国立大医学部に似ていることもあり、また自分の学力の進捗状況を確認する意味でも受験してみました。

さらに言えば日医はセンター試験が不要で、かつ年齢的な差別も一切ない、とのことだったので、とりあえず1次(学科試験)だけでもトライした次第です。

自分の番号を見つけたときは、信じられなかったというか、「こんなんで良いのかな?」といった感じです。

医学部といえども受験とはこういうものか、と(奇妙な)自信が湧きつつ、次を目指すきっかけとなりました。

科目ごとの出来は次のように推定しています。

科目難易度推定得点率(※)
英語普通85%
数学40%
物理90%
化学普通~難50%
※当時、合格者には成績開示はなかった

英語と物理で逃げ切った、といったところでしょうか。

他方で特に数学は難し過ぎて(トップレベルの受験生を除き)あまり差がつかないのでは、と思います(日医は数学が難しいので有名)。

全体的に国立の試験傾向に似ていたこともあり、色々な意味で良い経験となりました。

30歳近くも離れた若い子たちと机を並べてみて<コラム>:
自分の子供ほどの人たちと一緒に試験を受けたりするのは、正直、気が引けるところもありました。
彼等も戸惑ったり等、気分のいいものではなかったと思います。「こんなオッサンが今更、医者を目指すなんて…」等々、教室では色々と思われたに違いありません。
ただし、ここまで年齢が離れていると、かえって堂々としていられるもの。
志をもって真摯に勉学に励めば年齢差はそれほど気にならなくなるのではと思います。

40代・50代の医学部再受験体験談:国立2次・私大編

最初に国立2次及び私大を念頭にした勉強について紹介します。

科目は英語、数学、理科(筆者は物理・化学を選択)です。

なにぶん30年近くの本格的な受験勉強ですので、まずは基礎固めからです。

🍀英語:

仕事で読み書きはある程度こなしていたのですが、文法をはじめ基礎からやり直すことにしました。

勉強してみた感想は、年齢にかかわらず意外と取り組みやすかったです。

特に英文解釈や長文読解(リーディング)は勉強していて(現役の頃以上に)興味を持って取り組めたと思います。

各科目の中で成績も常に一番良かったです。

🍀数学:

筆者はもともと理系だったこともあり、スンナリ入っていける、と思ったのですが…

やはり年齢のせいか、細かな(複雑な)計算式の展開をミスせずできるようになるのは大変でしたし、
スピード自体が若い頃のようにはいきません。

例えば三角関数や数列の、面倒な式の展開は本当に泣かされました。

🍀理科:

物理のやり直しが一番楽でした。
昔、勉強した頃の感覚やイメージが顕在化しやすかったほか、今の参考書がとても親切でわかりやすかったのも幸いです。

学習時間も最も少なかったと思います(計算も数学ほどは苦労しなかったです)。

これに対して、化学の勉強は物理に比べて大変だった!

理由は細かな暗記が必要なことと、計算問題で細かな四則演算が求められたこと。

化学はそもそも様々な知識が絡み合っていますので、どうしても年齢的な記憶力の衰えは隠せません。

🍀全体:

とはいうもの、全体的にみると国立2次や私大向けの勉強は、中高年になっても十分まだまだいける、というのが感想です。
暗記もやり方によっては十分成果をあげられると感じています。

40代・50代の医学部再受験体験談:センター試験(現共通テスト)編

国立大医学部(一般入試)で大きなハードルだったのが、センター試験(現在の共通テスト)です。

特に筆者の場合、文系科目(国語と倫理・政経)は完全にゼロからやり直しでした。

特に現代文はきちんと対策していないと、足元をすくわれます。
古文も同様です(他方、漢文は短時間でなんとかなります)。

特に現代文は問題文の分量が(筆者が現役だった通り昔に比べ)半端でなく、まるで、どこに解答根拠があるかを探す、いわゆる情報検索試験のような感じでした。

また古文は文法と単語を勉強したからといって、スラスラ読めるようにはいきません。

活用形や接続、意味などが複雑に絡み合いあっているため、それなりの時間を割いて文法ドリルなどと格闘していました。

それに対して社会科(倫理・政経)はとても(暗記科目であるものの)勉強しやすく満点近く取れました。
国家試験の勉強の経験やノウハウが生かされた感じです。

最悪だったのはセンターの数学(特に1A)。
これまた分量が多く、スピードが求められたのが一番厳しかったです。

現在の共通テストはさらに国語力のようなものも問われているようで、年齢が上がると本当に厳しいです!

総じてセンター試験(現共通テスト)では、
地頭がもとめられる、もしくは幼いころからの英才教育が必要なのでしょうか。

とにかく国立2次に比べると(年齢が高くなるにつれて)努力があまり報われない、というのが正直な感想です。

ちなみに国立大医学部を目指すなら、「小学校1年でSAPIX(←塾名らしい)、では遅い!」などと聞いたことがあります。

40代・50代の医学部再受験:参考書紹介

筆者が過去受験したのは一般入試でした。
ですので勉強法や利用した参考書は現役の受験生たちと基本的に変わりありません。

ここでは参考までに筆者も活用した定番ものを中心にまとめておきます。

基本編

英文法・頻出英文法・語法問題1000(桐原書店)
英単語・システム英単語(駿台文庫)
英語読解・基礎英文問題精講(旺文社)
・ビジュアル英文解釈(駿台文庫)
数学・黄色チャート(数研出版)
物理・橋元の物理をはじめからていねいに(東進ブックス)
化学・岡野の化学をはじめからていねいに(東進ブックス)

国立2次・私大対策

英語読解・速読英単語必須編(Z会)
・速読英単語上級編(Z会)
・やっておきたい英語長文700(河合出版)
・英語長文レベル別問題集難関編(東進ブックス)
・英文解釈教室(研究社)
英作文・ドラゴンイングリッシュ(講談社)
・英作文ハイパートレーニング(桐原書店)
・竹岡広信の英作文が面白いほどかける本(中経出版)
数学・1対1対応の演習(東京出版)
・やさしい理系数学(河合出版)
・数学スタンダード演習(東京出版)
物理・物理のエッセンス(河合出版)
・名問の森 物理(河合出版)
化学・化学重要問題集(数研出版)
・化学の新演習(三省堂)
・化学の新研究(三省堂)
・化学標準問題精講(旺文社)
過去問・○○大学過去問と対策<赤本>(教学社)

センター試験(現共通テスト)対策

過去問・センター試験過去問レビュー<黒本>(河合塾)
英語・英語リスニング満点のコツ(教学社)
数学・センター試験必須マニュアル(東京出版)
現代文・田村のやさしく語る現代文(代々木ライブラリー)
・入試現代文のアクセス(河合出版)
・現代文の開発講座(駿台出版)
古文・漢文・望月光の古文教室(旺文社)
・古典文法基礎ドリル(河合出版)
・読んで見て覚える古文単語(桐原書店)
・古文上達基礎編(Z会)
・漢文ヤマのヤマ(学研)
・漢文句形ドリルと演習(河合出版)
社会・センター試験 政治・経済の点数が面白いほどとれる本(KADOKAWA)
・センター試験 倫理の点数が面白いほどとれる本(KADOKAWA)

以上、主な定番ものを挙げてみました。

これは一例にすぎず、全て紹介するとなると、この数倍になってしまいます。

やはりゼロから(特に国立大医学部を)目指そうとすると、その勉強量は半端ではりません。

あくまで筆者の個人的な感想ですが、大型の士業試験(難関国家資格試験)よりも大変なのではないかと思います。

(短絡的な物言いですが)要するに”○○士”になるより、医師になる方が厳しいということ。

ですので、特に年齢も考慮すると(さらには現在の共通テストの試験傾向に鑑みると)次の学士編入を目指すのが現実的と考えられます。

40代・50代の医学部再受験:学士編入について

筆者は現在も(悪あがきながら)奮闘中の身であります。

目標は国立大学が中心になりますが、かなり厳しい結果が予想されます(なお私立では東海大が候補に挙がる)。

倍率的には10~20倍くらいでしょうか。

ただし100%絶対無理、というのではなく、大学によっては年齢に弾力的なところもあるようです(50代入学者の実績があるところもある)。

上述の通り、今日の共通テストが高齢受験生にとって不利であることを踏まえると、やはり学士編入が比較的現実的な目標と言えるでしょう。

そこで学士編入で特に留意したい点は次の通り。

  • 推薦状が必要な大学が多いが、不要のところもある
  • 学科試験は自然科学系以上に英語が大事

🍀推薦状について:

大学によっては、出身大学の指導教授や会社の上司によるものを要求してきたり等、40代以上の受験生には厳しいようです。

また予備校の講師関連などではダメ、と明記しているところもあるので、候補となる大学は限られてきます。

とは言え、全ての大学が要求しているわけではなく、少なくとも5~6校は推薦状不要のこともありました(ただしどこにでも行く覚悟が必要です)。

🍀学科試験について:

どのような学科試験を課すかについては、これまた大学によって様々です。

確かに阪大の学士編入のように全ての科目にわたって本格的な内容を課す大学もありますが、
他方で(生物・生命科学を除き)大学受験+αレベルの内容を要求しているところが多いようにも感じました。

情報を集めてみても、むしろ一般入試の方が難易度が高いのでは、という印象すらあります。

例えば理工系出身の方は、生物は通常履修していないでしょうし、生物系出身の方は物理は未修が多いでしょう。
たとえ理系の学部(もしくは大学院)出身者でも、自分の専門分野以外は意外と疎かったりするものです。

ただし(当然のことながら)生物・生命科学分野は別。
ある程度、本格的な出題がされています。

もっとも、この分野の勉強法は確立していますし、定番の参考書なども殆ど決まっていると言ってよいでしょう。

ですので高校生物からじっくり独学をしても、決して不可能ではないと考えています。

むしろ学科試験の合否を左右するのは、ズバリ英語!

得意な人と、そうでない人とで差異が顕著に出やすく、
学生時代から触れたことのない人は、これに最も時間を費やしそうです特にリスニングは時間がかかるうえ、かなり大変です)。

ちなみに英語は本当に重視されているようで、TOEFLのスコアを要求してくる大学も少なくありません。

なお、医学部の再受験ではサイト「医学部受験と再受験」が有名で、参考になる有益な情報が満載です。

おわりに~40代・50代以上の再受験生の方へ~

最後に今後について筆者の見解を述べておきます。

結論としては、やはり国立大医学部の一般入試は非常に厳しいと言わざるを得ません。

もちろん若い頃、受験勉強が得意だった(例えば東大を卒業しているなど)という方は問題ないと思います。

ですが、いわゆる凡人には全くの未知の領域となります。
理由は年齢的なハードルがあるうえ、特に共通テストの試験傾向が厳し過ぎるのです(超スピード試験化している)。

おそらく現役の学生でも(昔と違い)努力でカバーするのは大変と考えます。

そこで検討すべきなのが学士編入もしくは(経済的に余裕のある方は)私大医学部です。

特に私大は例の入試差別問題の背景もあって年齢面については(以前と比べほんの僅かですが)寛容になりつつあるようです。

以上、長々と解説してきましたが、志のある方は、ぜひ悔いのない挑戦をしていただきたいと思います。

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