「ビジュアル英文解釈」は、非常に長期にわたって受験生に愛用され続けている英語の参考書です。
確かに80年代に書かれたものだけあって、今風の英文解釈の参考書とは違い、パッと見ただけでは使いづらそうです。
ですが、その人気は衰えることがなく、書店でも見かけないことはありません。
なぜでしょうか。
そこにはしっかりした根拠があるのです。
どんな英語でも自力で読解できるカギが秘められているのですね。
そこで、この記事では「ビジュアル英文解釈」の特徴やレベル、使い方を徹底解説していきます。
あなたも、そのカギで真の英語力の扉を開いてみませんか。
ビジュアル英文解釈の特徴・レベル・構成
特徴と効果
- 頭から読み進めるための思考訓練ができる
- 既習事項を繰り返せるように工夫されている
- 教師ではなく学習者の視点に立った解説がなされている
英文解釈の参考書と言うと、カッコ書きがされてたり、矢印が振られているものを思い浮かべます。
一目瞭然でとても分かりやすいのですが、それだけだと問題があります。
模擬試験等で少しでも難しめの英文を読もうとすると、???となってしまうのです。
あれだけ英語の構文を勉強しているにもかかわらず、です。
この参考書はこれを解決します!
そうです。
頭から英文を読み進めるための思考訓練をしていくのです。単なる英文の構造解説書でありません。
ただ、これができるようになるには、学んだことが次に生かされなくてはいけません。
つまり既習事項を新たな英文で繰り返し確認する必要がありますが、このための工夫がこの参考書には仕掛けてあります。
こうした特徴や構成は、すべて学習者の視点に立つことによるものです。
レベル
レベル | 章の数・ページ数 | |
---|---|---|
PART1 | 中学内容の復習~共通テスト・日東駒専 | 35章・282ページ |
PART2 | 東大、早慶、医学部等の難関大レベル | 26章・299ページ |
ビジュアル英文解釈は2分冊からなりますが、この両者にはレベルの開きがあるので注意が必要です。
もっとも、PART1の前半の多くが高校入試問題を扱っている一方、東大の入試問題も取り入れており、とてもユニークなつくりになっています。
つまり、内容的にはPART1だけでも相当の英文解釈の基礎力が身につきます。
ですが、できればPART1とPART2をセットで使うことをお勧めします。
PART2にも勉強しておきたい内容がある上、巻末の「文法篇」も有用です。
そして何より、PART1でやった勉強や思考訓練をPART2で生かしつつ更に強化してもらいたいからです。
各章の構成
各章は次のような構成からできています。
- 焦点
- 問題文(英文)
- 研究
- 大意
- Home Room
焦点
学習のポイントが示され、例文とともに解説していきます。
問題文(英文)
2~300語位のやや長めの英文が提示されています(分量的には速単シリーズの英文くらい)。
”Vocabulary”で語彙の解説がすぐ下にあります。
研究
まず<Review>にて、本文の英文と関係する既習事項が記されています。
それまでに学習した英文の引用です(訳付き)。
そしてそれに続き、頭から読み進めるカタチで解説が進みます。
ここで前から読むための思考を学んでいくのですが、もちろん構文解説もしっかり行っていきます。
また、この<Review>にも言及していますので、ここで既に学習したことも併せて復習・確認できます。
大意
日本語訳です。
Home Room
ここでは学生達との対話形式で解説が補足されます。
教わる側(学生側)の視点を取り入れていますが、これを通じて受験生が陥りそうなミスや曖昧にしそうな点を徹底的に指摘し、改善へと導きます。
まとめ・整理について
以上の基本的な構成以外に、次のような項目が用意されています。
- 英文読解のためのルール11コ(List of rules)
- SVの組み合わせ10コ(英文構造のテンプレのようなもの)
- PART2の巻末にある「文法篇」
最初の「ルール11」はPART1の巻末にもあります。
この参考書は、教師ではなく学習者の視点から書かれていますので、必ずしも体系的に書かれていません。
それを補うのがこの3点です(特に最後の「文法篇」)。
最初の2点はそれぞれ1ページにコンパクトにまとめられています。
3番目の「文法篇」は40ページ近くあります。
主に本文から重要な英文が引用され、体系的にまとめられています(既習の英文であり復習やチェック用に使えます~後述~)。
ビジュアル英文解釈のデメリット
- 図解が少なめで今風でない
- 文章がビッシリで、しかも一文が長い!
- 必ずしも体系的な解説書となっていない(ただしその点は補完されています)
英文の読み方を重視しているため、どうしても図解よりも文章での解説となってきます。
しかも1文が長くなりがちです。
ビジュアルという書籍名からは少し違和感があるかもしれません(注:このビジュアルには「授業が見える」との意味があるとのこと)。
さらに、上でも言ったように体系的な解説になっていないのです。
体系的に解説しようとすると、教師側の視点に立つことになりますが、それだとかえって受験生には分かりづらくなるからです。
そこで学習途中では体系的な知識伝授よりも思考訓練に力を入れ、PART2の最後で体系的にまとめる形で補完しています(それが先ほどの「文法篇」です)。
ビジュアル英文解釈の使い方と注意点
まず、PART1の「はしがき」は是非読んでおくことをお勧めします。
これを読んだのと、そうでないのとでは、学習する上での意識が違ってきます。
次に大きく勉強の進め方を記しておきます。
以下で使い方とその注意点を解説します。
英文に取り組む
英文に取り組む際のポイントは
- できるだけ頭から読み進める
- その際は必ず構文や文法事項を意識する
- <Review>を参照して本文との関連をチェックする
- 分からない単語等は”Vocabulary”(あるいは辞書)を参照しながらで構わない
PART1(特に前半)はやさしい英文です。
ですが、ここで読みやすいからと言って、サラッと読んでしまわないこと!
読めた・読めない、ではなく、どのように読み進めたか、が大切です。
必ずSVOCMなどの構文や、前置詞・分詞・関係詞といった文法事項を意識してみてください。
この参考書では、高校入試問題をやってたと思ったら、次は東大の問題がでてきたりします(高校入試レベルでも、真の基礎ができていたら、それは東大でも通用する、といったところでしょうか)。
ですので、読みやすい段階からフィーリングではなく、ロジカルに読み進める思考回路をつくっていくのです。
この最初の段階できちんとやっておかないと、後で問題がレベルアップした時、つまづきます!。
もっとも、ロジカルに頭から読む作業は結構大変です。
面倒というか、まどろっこしい、というか。
特に英文がやさしく感じるうちは尚更です。
そのため思考回路をつくるには、それなりに意識的な訓練や繰り返しが必要です。
そこで、それを助けてくれるのが<Review>です。
これを適宜参照しながら、復習も兼ねて、既習事項と今取り組んでいる英文との関連をチェックするのです(「研究」の解説でも言及しています)。
なお、分からない単語はVocabularyを見て構いません。
ただし、その都度しっかり覚えていくこと。
日本語訳をつくる
ポイントです。
- まず自分なりに英文の構造を捉えて、これを日本語に反映させる
- 訳は直訳で構わない(和訳は基本的に1回でOK)
- わからないときは無理に訳をつくらない
まず注意したいことがあります。日本語訳をつくってから英文の構造や意味を捉えようとする人がいますが、逆です。
「自分は英文をこのように捉えたんだ!」と明確にし、これを和訳に反映させるのです。
自分の訳を通じて、自分の把握の仕方と解説(伊藤先生の把握の仕方)との違いを明確にしていきます。
この違いこそが、読み方を誤っている箇所であり、改善すべき点です(ですので、つくる日本語訳は意訳ではなく直訳にします)。
あともう一つ注意点があります。
分からないときは、無理に単語をつなぎ合わせて日本語訳をでっち上げないように!
何が分かっていないか、が分からない、という最悪の勉強になってしまいます(これでは問題点・改善点が不明確のままです)。
音読する
英文解釈教材の音読については意見が分かれるところです。
私個人の意見としては、10回を目安にゆっくり音読するとよいと思っています(特にPART1の英文は難しくないので特にやった方がよいでしょう)。
復習の際は、何度も通読されると思いますが、やはりその際には、声に出されることをお勧めします。
復習と整理
人間は忘れる動物です。
とにかく繰り返さないとせっかく作った回路も頭に定着しません。
そこで、この教材では3段階で復習をしてみます。
- <Review>を使った復習
- 次回の勉強の際に前回の英文を音読してみる
- PART2の巻末の「文法篇」で繰り返しチェックする
最初のは先ほど述べた通りです。
2番目は、次回の学習の時にやります。
次の章をやる前に、前回の復習をするのです。
焦点でポイントを確認した後、英文をゆっくり音読しています。
そして3番目。これはPART2の巻末の「文法篇」を活用します。
この「文法篇」は先ほど申しました通り、ビジュアル英文解釈を体系的にまとめ直したものです。
最後はこれだけをフルに活用してチェックや復習ができれば理想です。
PART1、PART2が2周した段階で取り組みたいところです(1周だけだとツライと思う)。
必要に応じて、通し番号のページをさかのぼって確認していきます(注:これがとても面倒くさいうえ、通し番号のページも分かりづらいところにアリ)。
学習時間&期間
学習時間としては毎日1章当たり2時間はかけたいところです。
各分冊の章の数からして、PART1でしたら35日、PART2でしたら26日かかります。単純に2か月ですね。
また、1回だけではなかなかマスターしきれませんので2周はしたいところです。
2周目にして新たな発見や、本当の理解に到達することがあるからです。
特に2周目は1周から時間を空けずに取り組むことが肝要です(でないと忘れちゃって1周目が無駄になっちゃう!)。
結局、4ヶ月は時間をかけることになります。
ビジュアル英文解釈の次に取り組むべき参考書
PART1の後
先ほど申しましたように、PART1とPART2とではレベルが全く違います。
ですが、あえて英文解釈の勉強を続けるならばPART2を続けて学習されることをお勧めします。
理由は、これも先ほど申し上げた通りです。
PART1で勉強した内容や思考をさらに強化していけるからです。
ところが途中で他の参考書に乗り換えてしまうと、PART1でやったことが無駄になってしまうおそれがあります。
英文解釈力がしっかり身に付いた段階では問題ないのですが、修行中の段階で他の流儀に変更することはお勧めできません(英文解釈の教授法には、講師によって流儀の違いがあるということ)。
ですので、英文のレベル差を気にするよりも、
- PART1の内容を生かす努力をする(頭からロジカルに読むことを実践する)
- 復習や繰り返し(<Review>や「文法篇」の活用含む)をしっかりする
に力を入れましょう。
出来不出来は気にする必要はありません。
なお、志望校のレベルによっては、英文解釈よりも長文読解(多読や速読、さらには問題の解き方など)を勉強したい人もいるでしょう。
そんな人には、PART1の終了後、英文解釈の指南書ではなく長文読解問題集でやさしめのものをお勧めします。
PART2の後
基本的には、志望校の過去問もしくは長文読解問題集が挙げられます。
ここで「ビジュアル」で学んだものをどんどん実践していくのです。
一方で、更なる他の英文解釈用の参考書に進むのは、あまりお勧めできません。
もし続けるなら、同じく伊藤先生の「英文解釈教室」をお勧めします(ただし英文自体が今日の入試傾向と乖離が大きい)。
ですので先ずは、志望校の過去問を見てみましょう。
その上で必要に応じてご自分のレベルに合った長文問題集を選びます(解説が詳しく、CD等の音声教材が付いているものを推奨します)。
ビジュアル英文解釈:まとめ
「ビジュアル英文解釈」の特徴や使い方を解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
この参考書は、頭から英文を読解していくための指南書であり、思考訓練の場を提供してくれます。
つまり、読者の能動的な取り組みが前提であり、読み流すだけでは意味がないということです。慣れやフィーリングなどではなく、しっかりと考え、繰り返すことが求められます。
ですので、ぜひこの記事を参考にしていただき「ビジュアル英文解釈」を最大限活用していただきたいと思います。
真の英語力の扉が開かれることを願っています。