大学への数学「1対1対応の演習」は数学の定番の参考書です。
多くの人が使っていますが、必ずしも効果的に活用されているとはいえません。
そんな中にあっては色々と疑問や不安も生じてきます。
例えば、
- 参考書のレベルはどれくらいか?
- どのような使い方が効果的なの?
- 有名な参考書だけど、自分に合うか心配
- 各分冊ごとの特徴は?
等々。挙げたらきりがありませんね。
確かに、ただ漠然と取り組んでも、参考書を仕上げたというカタチだけで終わってしまうかもしれません。
ですがそれでは宝の持ち腐れです!
そこでこの記事では、「1対1対応の演習」のレベルや特徴を念頭に、その効果を最大限引き出すための使い方を徹底解説していきます。
あなたの数学力が根底から変革していくはずです。
なお、当記事は該当する参考書の実際の活用経験に基づき執筆しています。
1対1対応の演習のレベルと位置づけ
「1対1対応の演習」(以下1対1の演習という)は初心者向けの参考書ではありません。
取り組むには、少なくとも教科書レベルの内容が完璧になっていることが必須です(偏差値的には最低ラインとして55は欲しい)。
参考書の位置づけでいえば、これに取り組む前提として黄色チャートの例題を一通り仕上げておくレベルと言えるでしょう。
他方、青チャートと比較されることがありますが、青チャートとの併用はオーバーワークのうえ非効率的であり、お勧めできません(どちらかを選択すべきです)。
また、この1対1の演習を仕上げた後についてですが、
「新スタンダード演習」もしくは「やさしい理系数学」がオススメです(難関校志望者の定番ルートです)。
もっとも、1対1の演習も完璧にするのは結構大変で、しかも、これだけでも十分入試に通用します。
ですから、時間との関係によっては、1対1の演習の後、直ちに過去問研究に取り組んでもよいでしょう。
1対1対応の演習の特徴と効果
1対1の演習は、入試対策を前面に押し出した受験数学の指南書です。
入試問題を解くための道具と、その使い方、そしてそれを使いこなすための訓練の場を提供してくれます(ある意味でテクニカル的な側面が強い)。
ご存じのように、教科書やその巻末問題等は学習の原点であり、重要な基礎を学べます。
他方、教科書の内容と実際の入試問題との間には、小さからぬ隔たりがあるのも確かです。
そうした状況においては、入試の典型的な出題傾向やその解法パターンを定石として体得しておくことは受験で勝ち抜くために不可欠です。
1対1の演習は、この橋渡しの役割を果たすものとして極めて有効です。
しかも、この参考書の凄いところは、非常に限られた問題数で効率的に入試問題の本質に迫っているコト。
要するにコスパが最高ということです。
1対1対応の演習の効果的な使い方
参考書の構成と具体的な学習の進め方
1対1の演習は、各単元ごとに、要点の整理、例題、そして(例題に対応する)演習題から成り立っています。
このうち例題では、典型的な入試問題を通じて、解法パターン(解法の定石)を学びます。
結局、これが戦う武器になり、それを使いこなせるように訓練していきます。
人によっては、これ(例題の解説)を直ちに暗記材料にする人もいますが、できれば10分ぐらいは自分で考えて解くとよいでしょう。
ただし、これは道具であり、知らないとどうにもならないところがありますので、10~15分考えてもわからない(思いつかなければ)解答解説を熟読しましょう。
そして必ず(後日)自分でペンを持って再現してみるのです。
他方(その例題の下にある)演習題に対しては、例題で学んだことを実際に活用しながら自力でチャレンジしてみます。
今度は20分から25分ぐらいかけてみます。
ここでは、手に入れた道具(定石)を使いこなせるように徹底的に訓練するのです。
ただし、25分考えても分からなければ解答を確認していきます。
中には1時間も2時間も意地になってしまう人がいますが、受験勉強としては効率的とはいえません。
受験数学を真にモノにするための秘訣とは
以上の勉強法も含め、その学習効果にはどうしても個人差がでるものです。
そこで、この個人差を極限まで縮めるもう一つの重要な学習上のポイントを示しておきます。
勉強に共通することですが、繰り返しが大切です。
ここでも同様にできなかった問題を中心に3周はしたいところです。
でも本当の勉強の核心は復習をするタイミングです。
できなかった問題は、1週間以内(できれば3日以内)に解答を再現してみます。
時間が空きすぎると解法技術が身につかず、道具としてなかなか使いこなせるようになりません。
結果、2周目は、ある程度1周目と同時並行して進めていくことになります。
どれくらいの時間をかけるべきか
この参考書は1冊当たり、例題だけでおよそ60問から多いもので100問近くあります(演習題を含めると、この倍になります)。
そこで、できれば1日当たり2時間から2.5時間ほどかけ、1冊当たり1.5~2か月ぐらいで仕上げていきます(それでもトータルで9ヶ月から1年近くかかる計算になる)。
またやり方によっては、集中して2~3週間ほどで1冊仕上げるというやり方も考えられます。
なお時期についてですが、現役合格を狙うのであれば、遅くとも高3の秋ごろ(11月ぐらい)までに仕上げておくことが必要です。
そして、ここから逆算して学習計画を立てるのです。
遅くとも高校2年の秋頃には始めた方がよいことがわかります。
1対1対応の演習:分冊ごとの個別レビューと使用上の注意点
大学への数学 1対1対応の演習/数学Ⅰ
この分冊では2次関数が最大のテーマです(ここだけもこの分冊の価値は十分にあり!)。
実は(難関校の入試問題も含め)この2次関数絡みの問題に帰着してしまうものが非常に多いです。
具体的には、解と係数の関係にまつわる問題、及び頂点の位置によって場合分けする問題等。
つまり、ここでの内容は入試に直結する上、訓練することで入試問題の解法を見抜けるようになるのです。
また、最初の数と式の箇所は、一般的に疎かになりがちですが、決してばかにできません。
後々色々なところで応用していくことになります(これらは道具であることを忘れずに)。
とにかく、分量は全体的に少なめですが、入試の頻出マターに対する解法エッセンスが詰まってます。
大学への数学 1対1対応の演習/数学A
確立と整数を中心に扱っています。受験生が最もアタマを抱えるところといってもよいでしょう。
問題や論点の網羅性は優れているのですが、この分野が苦手な人にとっては、解説も含め少々キツイかもしれません。
こんな時は、無理をせず、例えば確立なら「ハッとめざめる確率」(安田亨 著)、整数なら「佐々木隆宏の 整数問題が面白いほどとける本」(佐々木 隆宏 著)で先ずは勉強してみることをお勧めします。
その上で再度取り組むと見通しがよくなるのではないでしょうか。
注:確立漸化式等の難関校の頻出マターはまた別途対策が必要です。
大学への数学 1対1対応の演習/数学Ⅱ
ここも先ほどの2次関数と並び重要テーマがそろっています。
ボリューム的にもシリーズの中でMAXです。
戦うのに不可欠な武器のオンパレードといえます。
特に座標と軌跡の章は超重要で、様々なところで応用がきくところです。
例えば、変数xとyの関係式を、媒介変数 t の2次方程式に捉え直す問題(←本格的な入試問題はこのパターンばかりといってもいいくらい)。
ここでは考え方をしっかり学び、かつそれを実践で使いこなせるように徹底的に訓練してください。
一見難しそうに見える問題に対しても、先と同様、解法が見抜けるようになってきます。
あと、意外と疎かになりがちですが、導関数(微分)の定義と積分の定義はしっかりマスターしましょう。
でないと足元をすくわれてしまいます(旧センター試験レベルでも平均点がガクンと下がっていました)。
大学への数学 1対1対応の演習/数学B
数列、統計そして融合問題です。
ここも、数少ない良問を使用しており質・量ともに無駄がありません。
ですので取り組み方としては、基本的に上で述べたことと同じです。
ここで特に注目したいのが、融合問題。受験数学の珠玉と言ったら大げさでしょうか。
結構、勉強の手ごたえを感じると思います。
なお、ここ(融合問題)にきて、学習が解答を単に暗記するパターンに終始している場合は、最初から復習し直すことをお勧めします。
大学への数学 1対1対応の演習/数学3
ここから理系向けとなります。
微分・積分が主な学習分野であり、理系にとっては比較的取り組みやすく、得意な人も多いと思います。
ここでの注意点は、解き方のテクニックばかりでなく、微分の定義や積分の考え方をしっかりマスターすることです。
数学Ⅱでも言いましたが、特に導関数の定義については要注意。
定義から微分の公式を導けるようにしておきます。
積分については(特に面積を扱う章にて)定積分の定義をグラフを通じてイメージできるようにします。
さらに言うと、最初の極限の分野も同様です。
計算だけでなく発散や収束する過程をしっかり理解してください。
これらの定義や考え方は、問題が抽象的になったり難しくなったとき必要になってきます(公式丸暗記とパターン学習では限界があります)。
大学への数学 1対1対応の演習/数学C
ベクトル、2次曲線、複素数平面が主な学習内容ですが、それに加えて総合問題をも扱っていきます。
中でも(微積分に比べ)2次曲線を中心に苦手な人が少なくないようです。
ただし、それほど難しいものではなく(注:一部計算がキツイ問題あり)、問題の選定を含めこれまた非常に上手くまとめられています。
演習を通じて慣れていきましょう。
また(個別分野もいいのですが)注目したいのが、ここでも総合問題です。
難関校の試験問題に比べ全体的にやや易しめの感がありますが、こういうのを確実に出来るようにするのが大切です(本番で出題されたら必ず完答してほしいレベルです)。
1対1対応の演習:おわりに
主に1対1の演習の使い方と注意点について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
この参考書を使うにあたり特に大切なことは
- 取り組む前提としての基礎
- 復習(繰り返し)とそのタイミング
です。
とにかく、この参考書は戦うための十分な武器(入試問題を解くための技術や道具)を授けてくれます。
上手く活用することで、この参考書より難しい問題にも十分対処できるようになるのです(それは皆さんの先輩達が証明しています)。
ですので、勉強の基本方針としては、いたずらに難問をこなすのではなく、こうした厳選された良問を完璧に解けるようにしていただきたいと思います。