英文法の勉強は退屈なうえ役に立たない、そう考える人が多くなっています。
しかも近年では、高校でも英文法の授業がないところが増えてきたとか。
ですが、大学受験において英文法が不要になるわけでは決してありません。
むしろ、受験生社会人を問わず、英語を習得する上では欠かせないのです。
他方で、特に独習する場合などは、どのように勉強すればよいのか戸惑うもの。
確かに情報はたくさん出回っていますが、いざやってみると、なかなか思うようにいきません。
でもご安心を。
英文法は確実にマスターすることができるのです。それも得意中の得意にすることができます。
そこで、ここでは大学受験から社会人まで念頭に置きながら、英文法の勉強法を参考書とともに徹底解説していきます。
英文法の勉強はなぜ必要か
英文法は、コミュニケーションをとるための言葉のルールです。
このルールに従って言葉を運用することで、初めて正確に相手に言いたいことを述べたり、相手の言っていることを理解できたりします。
ところがこのルールが存在しなければ、言葉がバラバラになってしまい、言いたいことが伝わりませんし、相手の言っていることも理解できません。
また、もし仮にルールではなくフィーリングに頼って英語ができるなら、私たちの先輩がとうの昔に実践しているはずです。
受験生だって苦労しませんよね。
ですから、英文法の習得は英語をマスターする上で避けられないのです。
むしろ、英語を得意にするために、これを使わない手はない、と前向きに考えられないでしょうか。
そこで以下では、誰でも確実に英文法を身に着けられる勉強法を解説していきます。
英文法の勉強時期と勉強時間
英文法は英文読解、英作文、リスニング、スピーキングのすべてにわたる基礎となります。
したがって、英文法の学習は、それ以外の分野の学習に先立って真っ先に一通り習得してしまいます。
高校生なら、高校1年の1学期中に、あるいは夏休みなどに集中して一通りマスターしてしまうのが理想的です(学校で文法の授業が組まれていたら、復習のつもりで臨めばよいでしょう)。
英文法の勉強時間と期間については、1日2~3時間、1.5~2か月で集中的に行っていきます。
どうしても大量の情報を一挙に習得する必要があるからです。
英文法の勉強の進め方(重要)
英文法の勉強法には2つの進め方があります。
それは
- 英文法の勉強の際に、英作文やスピーキング、リーディングも念頭にいて総合的に学習するやり方
- 英文法の習得に集中するやり方
前者は、主に社会人を念頭にしたやり方で、1冊の英文法の参考書を通じて英文の暗唱、英作文、さらには音読なども行い、総合的に英語力の向上を図っていきます。
試験対策というより、むしろ実用的な英語の習得を目指すのです。
とても効率的な勉強と言えるでしょう。
ですが、デメリットもあります。
実際の学習では、英作文用の参考書や読解用の参考書、英単語帳、さらにはスピーキングやリスニングの教材も広く活用していきます。
つまり、英文法とは別に学習領域ごとに各技能の訓練をしていくのですね。
これって、結局、多数の教材を広く活用していくことになります。
他方、よく、参考書は一冊に絞れ、などと言われますが、いろいろと参考書を使うことで実質的にその効果が薄れてしまいます。
厳密に言えば、できるようになる人と、そうでない人との間に個人差が出てしまい、
人によってはどれも中途半端になってしまう、なんてことにもなりかねません。
そこで、2番目の学習法が推奨されます。
そこでは専ら次の2点を目指します。
- 英文法の基礎知識を正確かつ完璧に頭に定着させる
- アウトプット用の参考書(問題集)を完璧に仕上げる
この2点に絞り込みます。
確かにこの勉強法では、文法学習修了時点で、必ずしも読めたり、書けたり、話せたりできるわけではありません。
ですがこれらの技能は別に勉強すればよいのです(と言うより必然的にそうなるはずです)。
むしろ個人差を最小限に抑えつつ、誰もが確実に英語の基礎を身に着けられます。
英文法の具体的な勉強法
具体的な勉強の概要を整理しておきます。
- インプット:インプット用の参考書を用いて2周する
- アウトプット:アウトプット用の問題集を用いて3周する
- アウトプットの際、2周目以降は、できなかった箇所を中心に取り組む
- 苦手箇所や弱点は、理解することとは別に必ずフォローしておく
インプット編
インプット1周目
1周目は、とにかく最後まで目を通すことを目標にしてください。
この1周目のポイントは、
- 1日3時間、英文法に集中し、1週間~10日間で一通り参考書を読み終える
- 最初から完璧な理解を目指さない(暗記も不要です)
途中で分からないからといってあれこれ調べたり、余計なことをしていたら、どんどん時間が経過してしまいます。
しかも労力がかかる割には意外と身につくものが少なく非効率的です(勉強した気にはなるのですが)。
初めはわからなくても、後になって「そうだったのか」となったり、復習や問題演習(アウトプット)を通じて理解が深まったりするのです。
ただし、参考書を読んでいる最中で、過去に読んだ学習内容と関係するところがでてきたときは、必要に応じて参考書の該当箇所にさかのぼって確認してください(このときは同じ参考書内を行ったり来たりします)。
単語で未知のものがあれば、単語帳等で調べ、使っている参考書にメモします(同時に単語ノートや単語カードを作っておくことをお勧めします)。
インプット2周目
2周目は、できる限り完全理解を目指します(ただし真の完全理解は、この後の問題演習を経て初めて達成できます)。
2週目のポイントは、
- 1周目からあまり時間を空けない(時間が空きすぎると忘れてしまいます)
- 1周目で分からなかったところは特に注意
すでに1周してますので、文法のおおよその内容や全体像は把握できていると思います。
ですので、ここでは知識の暗記も意識していきます。
具体的な進め方としては、次の2つ。
- (1周目と同様)1週間~10日間で仕上げ、そのあと直ちに問題演習に取り掛かる
- 各単元ごとに問題演習も並行して行っていく
どちらをとるかは、各人の理解の程度や演習書のレベルにもよりますが、
理解を深め、忘れないうちに知識を定着させるためには、後者の方がよいでしょう(後者の場合はインプット2周目とアウトプット1周目が同時並行となります)。
アウトプット編(問題演習)
最初に問題演習の目的を確認しておきます。
- インプットの理解を完全なものにし、知識を頭に定着させる
- 自分の弱点、苦手な箇所をあぶりだす
- その弱点や苦手な箇所を徹底的に克服する
演習1周目
1周目は、出来不出来を気にすることはありません。
半分近く正解できない、なんてこともあり得ます(インプットだけでは不十分なことを痛感されるはずです)。
それより解説をしっかり読んで完全に理解することが大切です。
必要に応じてインプット用の参考書に戻って確認していきます。
アウトプットを通じてインプットした知識を定着させるのです。
また間違えた問題はもちろん、たとえ正解だったとしても、あやふやだった問題については、必ず参考書に印をつけておきます(自信をもって解答でき、かつ正解したものだけノーマークとなります)。
1周目の不正解等に関しては、まだ十分理解できていない、あるいはインプットが定着していない状況、といえます。
ですから、1周目は出来不出来よりも、理解とインプットの強化を図るぐらいのつもりで勉強を進めるとよいでしょう。
演習2周目
2周目は、1周目でマークがついたところを中心に演習します。
今回は出来不出来に少しシビアになりましょう。
2周目もできなかった問題や、あやふやなところは、自身の弱点、苦手な箇所になり得るところです。
解説を十分読むとともに、できなかった原因が、暗記が不十分だったのか、あるいは理解不足だったのか、よく確かめながら復習します。
特に後者の場合はインプットの参考書に戻って確認すること。
当然今回出来なかった問題は、少し強めにマークしておきます。
問題演習のコワい落とし穴:
問題集を繰り返しやると、嫌でも正解が頭に入ってきます(特に選択問題)。
確かに演習の繰り返しは知識を頭に定着させますが、他方で、理解が完全でないうちに○×だけで済ませてしまうと、応用がきかなくなってしまいます(ただのクイズと同じです)。
ですので、出来不出来だけでなく、解説にしっかり着目し、これを自分の言葉で説明できるくらいに学習を深堀していきましょう。
よく、他人に解説できるようにせよ、と言われますが、インプットよりもむしろ、問題演習で目指すべきことと言えます。
演習3周目
2周目でマークがついたものを中心に演習します。
ここで間違えたり、曖昧だったもの(特に3回ともできなかったもの)は、レッドマーク!
そう自分に言い聞かせてください。
少なくとも3回目ともマークがついたものは、自身にとって本質的に苦手である可能性が高いです。
参考書で内容を確認することはもちろんですが、
こうした弱点は別に対策をしておかないと、放置され、同じ間違いを繰り返してしまう危険性があります。
フォロー編
アウトプットの段階で2度、3度と間違えたり、曖昧な解答しかできなかった問題については、個別に対策をしてフォローしていきます(注:1周目はできなくても、やらなくてよい)。
具体的には間違いノートやチェックリストの作成です。
手元に置いて、いつでも確認できるようしておくとよいでしょう。
確かに本来なら問題集等に直接書き込んで情報の一元化といきたいところです。
ですが、問題集自体が分厚いうえ、初学者の使った参考書など(書き込みだらけで)読みづらく役に立たなかったりします。
結局、参考書等に書き込むだけ書き込んで、弱点が実質放置されたまま、なんてことも…
ですので、むしろ別ノートに特化して繰り返しチェックすることをお勧めします。
試験直前などもサッと見れば済みます。
英文法の勉強の注意点~理解だけでは不十分!~
先ほどの弱点のフォローとも関係しますが、英文法の勉強って、やはり泥臭い側面が付いて回ります。
例えば、lieという単語。
この単語に関連して、以下の事項が完璧に整理されて頭に入っていないといけません。
原型 | 過去形 | 過去分詞 | 現在分詞 | 意味 | |
---|---|---|---|---|---|
自動詞 | lie | lay | lain | lying | 横たわる |
他動詞 | lay | laid | laid | laying | ~を置く |
こういう箇所が積もり積もって基礎学力に影響してきます。
理解とは別に、頭に叩き込まれているかどうかの問題です。
この辺をキチンとやっているか否かで、ブロークンイングリッシュで終わるか、向上していけるか、が決まります(偏差値的にも60あたりをウロウロするか、70まで届くか、が分かれます)。
上で弱点のフォローを強調した理由の一つでもあります。
英文法のオススメ参考書
中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。
レベル・用途 | 入門書(初心者向け) |
メリット | ・ゼロから英語をやり直すことができる ・社会人のやり直し学習としても定評がある ・問題がついており簡単な演習もできる ・音声もついていて総合的な学習ができる ・300ページ以上あるが、全く負担を感じさせない |
デメリット | ・当然ながら大学受験には全く足らない |
英語のイロハから勉強するための参考書です。
特に文法の基礎についてやさしく解説しており、初心者向けの参考書の代表格です。
構成は見開きで、解説と練習問題がセットになっています。
中学英語から学び直したい全ての人に有用であり、社会人のやり直し学習用としても好評です。
実は、こういう教材が本当は大切であり、ここに書かれている内容を駆使できれば、特に実用面で困ることは殆どなくなります。
ですので、社会人の方はこの一冊に特化して、文法から英作文、スピーキングまで総合的に学習することも十分アリと言えます。
大岩のいちばんはじめの英文法【超基礎文法編】
レベル・用途 | 入門書(初心者向け) |
メリット | ・高校レベルゼロから始められる ・丁寧な講義調の解説で分かりやすく、文法嫌いな人でも取り組みやすい ・アプリを活用して音声学習もできる |
デメリット | ・大学受験用としては足りない |
こちらも初心者向けの入門書であり、それこそ中学英語の復習からスタートします。
解説は講義調で丁寧になされている一方、コンパクトにまとまっているので、英語が苦手な人も挫折しないで勉強できるでしょう。
社会人のやり直し用としても広く利用されています。
英語は苦手、文法は嫌い、という方は手に取ってみてはいかがでしょうか。
ただし大学受験としては更に別のインプット教材が必要です。
この参考書はそのための足掛かりとなるものです。
一億人の英文法
レベル・用途 | インプット用(どちらかというと社会人向け) |
メリット | ・話すことに重点が置かれ、ネイティブの視点で学べる ・受験英文法が向かない人にとっては取り組みやすい ・イラストが豊富に取り入れられている |
デメリット | ・大学受験対策としてはやや不足(話すこと重視のため) ・分量が多く、冗長的に感じるかも |
話すことを念頭に置いた文法書です。
特にネイティブがどうしてそういう表現をするのか、に着目して解説しています。
取り上げている英文も実用的なものが中心。
本書は実践的で使える英語の習得をを目指していると言えます。
他方、受験英語で問われる事項については一部解説が不足気味です。
反受験勉強派的なつくりとも言えるでしょう。
また、分量については600ページ以上もあります。
難しい文法用語は極力控えられていて読みやすい、との声がある一方、
冗長的な解説や著者特有の日本語表現に苦労する読者もいるようです。
ですので、特に社会人の方で受験英文法が馴染めないという人は手に取ってみると良いでしょう。
他方で、オーソドックスかつ体系的な文法解説書が欲しいという人は、次の「総合英語 Evergreen」をお勧めします。
総合英語 Evergreen
レベル・用途 | インプット用(万人向け) |
メリット | ・情報が体系的に網羅されている ・文法ルールの理由付けを重視している ・イラストが豊富に取り入れられている ・辞書的にも使える |
デメリット | ・分量が多く、隅から隅まで読もうとすると挫折するおそれあり |
最も完成度の高い正統な英文法のテキストです。こちらも定番中の定番と言えるでしょう。
基本的事項から発展的な内容まで体系的に網羅されています(通常の大学受験生は、実質この一択と言ってよいのではないでしょうか)。
また、文法ルールについて「なぜか」を重視したつくりになっており、機械的な暗記にならないよう丁寧な解説がされています(この点が従来の文法書に対して画期的です)。
インプット用参考書の中では一番充実しているうえ、社会人の英語のやり直し学習にも活用できます。
ただしこちらも情報の網羅性との関係で、分量が600ページ以上とボリュームがあります。
従来の文法書に比べ遥かに読みやすいですが、隅から隅までというのはキツイかもしれません。
ですので、使い方としては、網羅性のある問題集と並行して活用しても良いでしょう。
単元ごとに演習を行い、必要に応じて辞書的に参照していきます(この場合は問題集が中心教材となります)。
Next Stage英文法・語法問題
レベル・用途 | 標準レベル・問題演習(万人向け) |
メリット | ・一通りの文法問題が網羅されている ・演習量も豊富 ・構成がコンパクトで見やすい |
デメリット | ・解説がやや簡素であり、基礎が完全でないと十分な理解に至らないかも ・ひっかけ問題や発展問題は少ないので、難問対策を望む人には足りない |
最もオーソドックスな演習書で、非常に多くの人に利用されている定番ものです。
一通りの文法事項が網羅されており、レベル的にも標準問題がそろっています。
万人向けと言えるでしょう。
また、構成がコンパクトにまとまっていて、見開きで左に問題、右に解説が載っています。
とても分かりやすく、覚える箇所も一目瞭然です。
さらにイディオムや発音・アクセントもついていて、知識の整理にも役立ちます。
ただし、解説がやや薄いため、インプット段階で基礎的理解を経ていないと、読んでも???となってしまうかもしれません。
ですので詳細な解説が欲しい人は、次に紹介する「英文法・語法 Vintage 」がお勧めです。
英文法・語法 Vintage
レベル・用途 | 標準レベル・問題演習(万人向け) |
メリット | ・解説が詳しく文法の真の理解にまで到達できる ・情報が非常に整理されている ・社会人にもお勧めできる |
デメリット | ・先の「Next Stage」のようなシンプルさは期待できず、やや見づらい |
先の「Next Stage英文法・語法問題」と殆ど同じレベルで構成も似たようなものです。
違うのは解説の詳しさ。
例えば、選択肢について、「なぜ正解なのか」あるいは「なぜ誤りなのか」がしっかり解説されています。
文法を本当に理解するには、この解説レベルの内容が頭に浮かんで説明できるぐらいを目指すとよいでしょう。
文法知識の理由付けや背景を確認していくのです。
裏を返せば、やはりインプットだけでは理解に限界があるとも言えます。
演習をやって本当に英語力の基盤ができる、そんなことを実感させてくれる一冊です。
なお、社会人の方でしたら、この一冊を中心に、作文まで念頭に置きつつ英語の総合学習をすることもできます。
全解説頻出英文法・語法問題1000
レベル・用途 | 標準~ハイレベル・問題演習(難関校志望者向け) |
メリット | ・質・量ともに充実しており、難関校レベルにも十分対応できる ・解説も非常に詳しい |
デメリット | ・レベルが最高峰で初心者の演習としては厳しい ・分量も非常に多く、繰り返せないおそれあり ・社会人にはオーバーワーク気味(試験特有のマニアックな問題もある) |
問題量が多く、かつそのレベルも高いので、質・量ともに文法演習書では最高峰の部類です。
いわゆる早慶志望者の御用達です。
また、解説も演習書の中では最も充実しています(先ほどの「Next Stage」とは比べ物になりません)。
さらに、各単元の後半に復習も兼ねた正誤問題と整序問題が掲載されています。
特にこの整序問題がまた優れもの。作文の足掛かりとして役立ちます。
ただし基礎が完璧でないと、量的にもレベル的にもかなり苦しいと思います(繰り返せないうちに挫折してしまうおそれあり)。
初学者がインプットの定着も兼ねて学習するのであれば、「Next Stage英文法・語法問題」や「英文法・語法 Vintage」の方が取り組みやすいでしょう。
社会人についても、ここまでは不要、というのが正直なところです。
さいごに
英文法の勉強法について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
英文法は英語をマスターする上で必要不可欠です。
その英文法を習得するには、勉強時間や期間に配慮しながら、適切にインプットとアウトプットをしていく必要があります。
そこでは、正確な理解を目指すとともに、自身の頭の中で知識の完成度を高めていきます。
もちろん弱点のフォローも必須です。
これらが後々技能別の勉強の土台になっていくのです。
ですので、今回の記事をぜひ参考にしていただき、皆様の英語力の発展に結び付けていただきたいと思います。