「英文解釈教室」は、今でも難関校志望者の間で圧倒的な支持を得ている伝説の名著です。
どの書店の参考書コーナーからも、その姿が消えることはありません。
他方、そのレベルは極めて高く、難し過ぎて使いこなせないという声も多々聞こえてきます。
確かにレイアウト一つとっても今風の参考書とは異なりますし、真面目に取り組みさえすれば誰でもスラスラ…とはいかないようです。
そこでこの記事では、この「英文解釈教室」につき、レベル・使い方・注意点を徹底解説していこうと思います。
英文解釈教室とはどのような参考書か
最初にこの参考書の特徴を挙げておきます。
- 難易度は最高レベルであり、通常の大学入試やTOEICには不要である
- 解説用の例文も含め、扱っている英文が難解である
- 図解は少なめで、紙面が文章でビッシリ埋められている
- 英文の構造だけでなく、読み進め方を解説している
参考書のレベル
英文解釈教室は、大学受験用参考書の中では最もレベルの高いものに位置します(これよりレベルの高いものだと、英文標準問題精講<旺文社>ぐらいです)。
一通り基礎ができている、という程度では厳しいというのが正直なところ。
共通テストやTOEICの点数など全く基準になりません。
通常の参考書ですと、解説のための例文は易しめだったりするのですが、
この英文解釈教室については、最初の解説用の例文自体が非常に難しいのです。
例えば<例文:9.1.1>。
関係詞の章の最初に掲載されている英文ですが、まぁコレが一発で読めたら英文解釈の勉強なんぞ今更要らんがな、というレベルです。
要するに、共通テストを含め通常の大学入試では不要ということ。
実は、高校の先生が自身の勉強のために使っている、というほどのレベルなのです。
向いている人
結論的には、上記の理由により、英文解釈教室は英文解釈の勉強をゼロから始めようとする人には向いていません。
基本的な文法や単語が習得できていることはもちろん、標準レベルの英文は読めることが前提となります。
その上で、例えば
- 京大などの難解な英文に確実に対処できるようになりたい人
- 将来、英語を専門にしたり英語を使う専門家になりたい人
- 偏差値65以上の人
が、この参考書の対象となってきます。
もちろん、この参考書ではなくても、難関校を含め合格点を取ることは十分可能です。
参考書の構成・つくり
英文解釈教室の構成は、各章ごとに
- 学習のポイントやテーマの提示
- 例文を用いた構文等の解説
- それまでの内容を踏まえた例題(演習)
の3段階となっています。
解説は一目瞭然の図解方式ではなく、長めの文章でなされています(しかも紙面にビッシリ埋まっている感じ)。
ところどころに矢印を用いたシンプルな図解がありますが、必ずついているとは限りません。
今風の参考書の記述やレイアウトに慣れている人には、かなり使いづらいく感じるのではないでしょうか。
それでも、新装版では、解説の日本語は旧版と比べ読みやすく、やさしいものに改善されています。
学習の効果
英文解釈教室の学習の効果として次の点が挙げられます。
- 英文解釈を体系的にかつより深く学べる
- 英文を論理的に把握できるようになる
- 頭から読みこなす訓練を通じて、どんな英文でも読みこなせるようになる
この参考書の最大の特徴は、英文の読み進め方を解説していることです。
この点が特に重要!
通常、英文解釈の参考書の多くが、図解を多く取り入れて分かりやすく構文等を解説しています。
カッコ書きや矢印を使ったアレです。
一目瞭然ですが、これだけだと実は問題があります。
英文に限らないですが、文章って、通常、先頭から読んでいきますよね。
漢文みたいに返り読みしたりしません。
もちろん英文に矢印なんて振られていない!
ですから、英文解釈の参考書を通じて英文の構造を勉強しても、少しでも難しめの英文を読もうとすると途端に躓いてしまうのです。
そこで英文解釈教室のような、読むプロセスを重視する参考書が重要になってきます。
英文の構文・構造にとどまらず、英文を先頭から読みこなすための方法を学ぶのです。
そこでは予想と修正を交えながら、頭から読んでいく思考訓練をしていきます(紙面がビッシリとテキストだらけになってしまうのはそのためです)。
英文解釈教室の使い方と注意点
学習時間と期間について
英文解釈教室の勉強時間としては、1日2時間はかけたいところです。
また、とにかく英文が、例文・例題ともに難しいので10~15分考えてわからなければ解説を読むこと。
特に1周目で徒に時間をかけても学習効果はあまりありません。
その分、2周目や復習に力を注ぎましょう。
学習期間は、個人差ありますが(繰り返しの期間を含め)3ヶ月から長くて半年以上はかかると思ってください。
なお、もし解説を読んでも全く理解できないときは、早い時期に他の参考書(例えばビジュアル英文解釈)に切り替えることを勧めます。
繰り返しが大切
英文解釈教室の使用法の最も大切な点です。
英文の難易度を考慮すると一読だけでは殆ど意味がありません。
学習効果が出るのは2周目以降です。
ですので、一度で正解することよりも、しっかり解説を読んで理解できること、そして2周目以降で確実に読解できるようになっていくことが大切です(参考書の後の方を読んでいくうちに、総合的な理解が進むことも多いです)。
そしてもう一つ重要なことがあります。
1周目が終わったらすぐに2周目に取り掛かること。
さらに言えば、1周目もあまり時間をかけず、できれば短期集中型で進めていきたいものです。
間が空きすぎたり、1周目が長すぎたりすると、忘れてしまい読解技術が身につきません。
もしキツイようでしたら、例題はとりあえず飛ばして、先ずは例文だけ集中的に1周してみるのもアリかと思います。
後半の項目・内容は特にしっかりと
英文解釈教室の中で特にしっかり取り組みたいのが後半部分です。
具体的にはCh10、Ch11(この二つの章は修飾関係)、Ch14(共通関係)、Ch15(挿入)の項目・内容。
これらは参考書の後半にでてくるものですが、英文全般に関係してくるところであり、また全体の復習も兼ねてきます(特に Ch14、15は例文の難易度も半端でない!)。
ところが(参考書のボリュームが大きいせいもあってか)とにかく参考書を1周する(形式的に終わらせる)ことばかりに注力しがちです。
他方で、学習が後半にさしかかってくると、おそろしいほど何も身についていない、なんてことがわかってきたりします。
ですので、これらの後半のチャプターは英文解釈の全般に関連するものとして、着実に学習を進めてもらいたいと思います。
1周目と2周目の間を空けず、かつ復習重視で繰り返す理由でもあります。
和訳に関する注意事項
英文解釈の勉強では、基本的に和訳をしていくことが重要なのですが、和訳に当たっては大切なポイントがあります。
それは、和訳しようとする英文の構造を、完全でなくてもよいので自分なりに把握しておくこと(この自分なりの把握の仕方を和訳に反映させるのです)。
これと正解の日本語訳や解説と照らし合わせることで、自分の解釈の問題点や改善点を明確にしていきます。
これが学力向上につながります。
ですが、この英文解釈教室では、初見(1周目)では全く歯が立たないものも少なくありません。
ここで英文の構造把握を誤ること自体は、勉強として問題ないのですが(そこを改善することが勉強ですから)、
マズいのは、英文の構造が全く掴めないのに、単語の意味だけを適当につなぎ合わせて勘で日本語訳をでっち上げること。
これなら和訳などやらない方がマシ!
それならば、和訳をするより、しっかり解説を読んで理解し、2周目で正しく構造把握や読解ができるように努めていきます。
このとき全くわからなかった英文は、音読の回数を増やしたり、後日の勉強の際に自分で読めるか再度確認してみることをお勧めします(2周目を待つまでもなく実質的な復習をするのです)。
音読について
音読は英語の発想や語順に慣れる上で重要であり、また、わからなかった英文を自分のものにするためにも効果的です。
ですので、音読をする際には、10回を目安にゆっくりと読み上げていくとともに、常に英文の構造をしっかりと意識していきます。
他方、英文解釈教室での音読には注意したい点もあります。
特に1周目で学習効果が十分に表れていなかったり、完全には英文を理解できていなかったりする場合です。
このような状況で音読しても、ただの棒読みに終わってしまいかねません。
ですので、このような場合は、無理にお経のように英文を唱えるのではなく、先ずは理解と復習に時間と労力をかけていきます。
そして音読については、英文解釈力が身についてきた2周目に徹底的に取り組んでみます(注:英文解釈教室では音読の効果につき賛否両論があります。)
英文解釈教室のハイレベルの例題一覧(参考)
最後に、英文解釈教室の例題の中でも相当の学習の歯ごたえや難しさを感じたものを特にピックアップしておきます(注:あくまでも私の個人的な感想です)。
勉強の力の入れどころや問題のセレクトの際の参考にしてみてください。
1.1(1) 1.4(1) 2.2(2) 3.1 3.4(2) 5.4(3) 6.4 7.1 7.2 7.3(3) 8.1(2) 8.4(1) 9.3(1) 10.1(2) 12.1(1) 12.1(2) 13.1 13.2(1) 13.2(2) 13.3(2) 14.2(1) 14.3(1) 14.3(2) 14.4 15.1(1) 15.2(1) 15.2(2) 15.3(1) 15.3(2)
注:赤字は特に難しく感じたもの(個人差あるので参考程度に)
英文解釈教室<新装版>まとめ
英文解釈教室 新装版の使い方、注意点等を解説していましたが、いかがだったでしょうか。
簡単にまとめますと次の通りです。
- 英文を含め、内容、質ともに最高レベルである
- 頭からの読んでいくためのプロセスを重視しており、予想と修正を実践している
- 解説の文章は多い一方、図解は少なめで必ずしも一目瞭然ではない
- とにかく繰り返しが大切で、学習効果が出るのは2周目以降である
- 和訳と音読は、理解の程度によっては注意が必要
要するに、英文解釈教室は今風の参考書とは異なり、極めて重厚な作りになっているということです。
当然ながら利用する側にもそれなりの時間や労力、そして相当の実力が求められます。
他方、これらのことを前提とすれば(今日の入試傾向に沿うかどうかは別として)真の英語読解力が身につくことは疑いようがありません。
ですので、こうした点を十分考慮の上、本参考書を最大限に活用していただけたらと思います。